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異能vationプログラム終了後も、オリジナルの電子楽器「UDAR(ウダー)」にかける宇田道信の情熱は変わらなかった。まず取り組んだのは、異能vationプログラム中に気付いた圧力センサーのスピードの問題だった。
(インタビューの前編ではその着想を、中編では開発の歩みを聞いている)
UDARは、ロープ状の圧力センサーに指を当てて演奏する。指をポンと当てたときに生ずる圧力パルスの幅は、短い場合は4ms(1000分の4秒)ほど。それまで使っていた圧力センサーは1秒間のスキャン回数が200回程で、ポンポンポンと叩いたときに圧力パルスを取り逃がし、音が鳴ったり鳴らなかったりするケースがあった。
「圧力パルスを逃さずに取り、どういう風に叩かれたかを正確に判断するには、圧力センサーのスピードを上げ、スキャン回数を1秒間に1000回ほどまで増やさなければいけないことがわかりました。そこで、駆動回路などに細かく修正を加え、1100回くらいまで速度を上げました。この回数だと、指のタッチを正確に音に反映することができます」
また、圧力センサーを駆動するために使っていた4枚の基盤を1枚に小型化。低音を出すパッシブラジエーターも4基搭載できるようになり、軽量化を実現するとともに、豊かな音が出せるようになった。
理想とする楽器を作るため、UDARの開発を続ける宇田。そのプロセスでは、異能vationプログラムが重要な役割を果たしたという。
「異能vationに受かるといろんな人に会えますし、広報のバックアップもしていただける。ユニークなアイデアを持っている人は、ぜひ応募してみるといいと思います。もし受からなくても、自分はどういうことを考えていたのか、どういう研究をして何をしたいのかを整理するいいきっかけになります。受からなくてもともと、受かったらラッキーくらいの気分で応募されてはいかがでしょう」
UDARのバージョンアップは進み、異能vationプログラム前には4.5だったものが、現在は6.0シリーズに。次の6.1シリーズでは、回路をパワーアップさせてさらに音量を大きくする計画だ。
「圧力センサーのスピードの問題は解決しましたし、軽量化、音量の確保も進んでかなり開発がまとまりそうだという感触を持っています。6シリーズは3Dプリンターで作るので、10台、20台くらいは時間をかけずに作ることができます。さらにバージョンアップを重ねていい楽器にし、量産体制も整えて、2年後くらいには欲しいと思っている人に届けられるようにしたいですね」
UDARがさまざまな人の手に渡り、かつてない音が奏でられる。遠くない将来に、そんな日が訪れそうだ。