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自然な動きで歩行する二足歩行ロボットの実現(中編)

2021年度「破壊的な挑戦部門」に挑戦した前田 洋は、人間が日常的に行っている複雑な動きをロボットに組み込むにあたって、ロボットだからできる機構を採用することにした。

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文:山本貴也

2021年度異能vationプログラム「破壊的な挑戦部門」に選ばれた前田 洋は、人間のように歩くことができる二足歩行ロボットの開発に挑んだ。

インタビューの前編はこちら

人間は歩くときに全身を制御し、非常に複雑な動きをしてバランスを取りながら歩みを進める。人間の動きをそのままロボットでまねるのは、至難の業だ。そこで前田は発想を転換した。

「人間の骨格構造の衝撃の緩和能力は非常に優秀なので、ロボットにそれをコピーしようとするのはかなり難しい。そこで、ロボットだからこそ組み込める機構を入れ、人間には不可能な能力をロボットに持たす発想に切り替えました」と前田は言う。

そこで考え出したのが、ロボットの骨盤運動機能の拡張だ。骨盤の左右に、自動車のサスペンションのような機構を脚部に接続して組み込む。これで地面に脚をつけたときの衝撃を吸収できるとともに、膝を伸ばした状態で重心を移動させることが可能になる。

ロボットだから実現できる「骨盤運動機能の拡張」のイメージ

「大きく背伸びができるようなイメージです。人間の背伸びはだいたい脚長の1割ほどですよね。この機構は左右独立で上下の可動域を広くとっているため、膝をほとんど伸ばした単脚支持のときだけではなく、両脚支持期間でも衝撃を大きく吸収することができます。それだけでなく、つま先を使わずに背伸びするようなこともできる。ロボットならではの骨盤の運動能力が身に付きます」というのが前田の説明だ。

また、つま先には受動関節を導入し、重心の移動に伴ってかかとを浮きあげ、つま先は地面に対してならいを動作できるように設計した。

大きく2つのパーツから成り立つつま先部。圧力センサーも搭載している

実際のつま先部

歩行実験を行ったところ、従来のロボットのようなぎこちない歩き方ではなく、人間のようなスムースな歩き方をすることが確認できた。ただ、課題も残った。

実験機「FC」の歩行試験映像 

「難しいのは、スペースですね。とにかく機能を優先し、外観に関しては妥協したため、開発した骨盤の機構は脇腹ぐらいまでの大きさがあるんです。いろんなプロポーションのロボットに組み込むためには小型化しなければなりませんが、小型化すると剛性が出しづらい。ここが難しいところです」と前田は言う。

しかし、異能vationプログラム中の開発で、人間のようにスムースに歩けるロボットの機構がはっきりと見えた。

次回は、異能vationプログラム以降の活動について話を聞く。

後編に続く

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