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健常者には見えていない世界を体験させる「発達障害者体験MRシステム」(中編)

「発達障害者の困難を日常生活で体験するMRシステムの試作」に取り組む2020年度「破壊的な挑戦部門」の挑戦者・宮﨑英一が作り上げたのは、視覚障害者が見ている世界を体験できるMRシステムだ。

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文:山本貴也

宮﨑英一は、「発達障害者の困難を日常生活で体験するMRシステムの試作」で2020年度異能vationプログラム「破壊的な挑戦部門」に選ばれた。ただ、このときにあったのはアイデアのみ。こういうシステムを作ったらリアルな障害者体験ができるという構想はあったが、実際のデバイスはまだない。

インタビューの前編はこちら

360度カメラを使って4Kで周りの風景を撮影し、その映像を視覚障害系の発達障害を持った人が見ているような映像にPCで加工、VRのヘッドセットに映すシステムの開発が始まった。

難しいのは、発達障害を持った人が見ている世界をどのように再現するかだ。この点については先行研究がなされており、視覚障害系の発達障害を持った人はモノが二重に見えたり、風景全体が強いコントラストで見えたりすることがわかっている。しかし、再現した映像が実際に発達障害を持った人が見ている世界にどれだけ近いのかは、なかなかわからない。発達障害を持った人のサポートを行っている人などにアドバイスを求めながら、改良を進めた。

手が静止しているときは普通に見える

しかし、手を動かすと動いた部分にブレや色のにじみが発生する

そうして、「発達障害者の困難を日常生活で体験するMRシステム」が完成した。ヘッドセットを着けると、発達障害を持った人が見ている世界を疑似体験できるデバイスだ。

「周りの人に試しに着けてもらうと『これはキツイ』『目が悪くなりそう』という反応が返ってきました。かなり違和感があるようです。しかし、障害を持った人は24時間そのような状態なんです。これを体験すると、発達障害を持った人への接し方が変わると思います」と宮﨑は言う。

制作したMRシステムでは、周囲の音が大きくなると映像の乱れが大きくなるなど発達障害を持った人が見ている世界がインタラクティブに再現されているだけでなく、プログラムの変更だけで聴覚過敏の人の感覚も体験できるようになっている。

「発達障害を持つ人の中には、周りに人が多くいるとパニックになる人がいます。画像認識で周囲にいる人数を把握し、それを映像に反映できるようにすれば、そうした障害の人の世界も再現できましたね。また、今回は音と映像だけしか使いませんでしたが、匂いが出るようになれば再現できる幅が大きくなると思います」と開発の先を見据える。

次回は、異能vationプログラム以降の活動について話を聞く。

後編に続く

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