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診断サポートや遠隔医療に革新をもたらす「超聴診器」(中編)

小川晋平

小川晋平が取り組む「超聴診器」から派生した「聴“心”器」だが、異能vationプログラムに採択されて実際に挑戦を始めると、当初の予測とはだいぶ様相が異なったという。

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取材・文:山本貴也

「超聴診器」に取り組むAMI株式会社代表取締役CEOの小川晋平と、同社Strategic Advisor(SA)の大室正志

医師の小川晋平は、自らが発案した「超聴診器」の開発を進めるうちにあることに気づいた。「超聴診器」は、心電と心音を同時に計測し、そのデータから大動脈弁狭窄症などの心不全の原因を早期発見するものである。

インタビューの前編はこちら

ただ、心音からわかるのは心臓の病気だけではない。交感神経と副交感神経のどちらが優位かによって、心拍は変動する。心音のデータをAIで解析し、「自律神経の定量化」を図れば、心の状態が見えるようになるのではないか──。

小川は、「超聴診器」の開発過程で生まれた「聴“心”器」のアイデアで2017年度の異能vationプログラムに応募。その革新性が評価され、「破壊的な挑戦部門」に採択された。

「審査員の方々には、私たちが作っている『超聴診器』も含めた世界観を評価していただきました。『心電と心音をAIで解析するというアイデアは世界を変えるよ』と言っていただき、非常に励みになりました」と小川は言う。

「聴“心”器」開発のため、小川は自らが関係する医療機関で心音のデータを取り始めた。しかし、そこでハードルに気づくことになる。

現行のプロトタイプ(医薬品医療機器等法未承認のため、販売、授与できません)

「聴“心”器」は、心拍の変動から心の状態を探ろうとするものだ。心拍の変動のトレンドはスパンが長く、データを取るには4、5分の間、心臓に当てておく必要がある。一方、「聴“心”器」の元になる「超聴診器」は、迅速に心臓に異常を検知するためのデバイス。心臓に当てる時間は、10秒ほどしか想定していない。

「『超聴診器』は心音を連続して聞くのではなく、短時間心臓に当てるだけでいいという世界観で作っていて、形状もそれに合ったものになっています。しかし、『聴“心”器』は4、5分の心音を取るため、心臓に当てるというよりウェラブルに装着する必要があるんです。当初は共通のハードを使い、ソフトウェアだけ変えて心の解析もしようと考えていたのですが、まったく別のハードが必要なことがわかりました」と小川は振り返る。

心の解析に足るよう、4、5分の心音のデータを安定して取るには、大きさ、形状、内部の機構を考え直さなければならない。「聴“心”器」の実現には、課題が残った。

ただ、異能vationプログラムの期間中に行った挑戦は将来の糧になると小川は感じている。「私達は将来的に『超聴診器』を在宅医療、遠隔医療などでの心臓のモニタリングに使いたいと考えています。そのときは、異能vationプログラムで進めていた心拍変動を長時間取るための研究が必ず役立つと思っています」

次回は、異能vationプログラム以降の展望について話を聞く。

後編に続く


小川晋平プロフィール

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