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次のコンピューティングを担う「量子コンピューター」(前編)

2015年度「破壊的な挑戦部門」の挑戦者に選ばれた湊雄一郎は、飛躍的な演算性能をもたらす量子コンピューターに挑んだ。

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文:山本貴也

2015年度異能vationプログラム挑戦者に選ばれた湊雄一郎が取り組んだテーマは、「量子コンピュータと人工知能」である。量子コンピューターは、量子の「重ね合わせ」や「もつれ」といった現象を利用して超並列処理を実現するが、利用環境やプログラムの開発環境が整っておらず、ハードルが高かった。そこで湊は、多くの人が量子コンピュータを利用できるようになるためのツール、アプリの開発を行った。

湊はもともと、コンピューター関係の仕事をしていたわけではなく、建築が専門だった。大学で建築を学び、卒業後は建築事務所に入所し、建物の設計に携わる。2008年に独立して以降も建築の仕事を続けたが、しばらくして転機が訪れる。2011年の東日本大震災で、建築の仕事が激減したのである。

この頃は、日本でもスマートフォンが広く普及し始めた時期。建築の仕事の代わりにスマートフォンのサイト制作を請け負い、湊はITの世界に足を踏み入れた。そして大手料理教室のシステムを担当するようになり、本格的にITの方に重心を移していく。

そんなある日、システムを担当していた大手料理教室が新たに金融会社を立ち上げることになった。金融計算には長い歴史があり、既存のコンピューターで行えることはかなりやり尽くされている。自分でも勝てる、新しい計算の領域がないかと模索しているとき、ウォール街などで金融計算を量子コンピューターで行うのが流行りつつあるという記事を目にする。

「量子コンピューターには、大きな可能性を感じましたね。これを使いこなしたら世界征服できんじゃないかと思いました」という湊は、金融会社の計算に量子コンピューターを持ち込むべく、研究を始める。

今でこそさまざまな量子コンピューター用のツールが開発されているものの、当時はまだ何もないに等しい状況。既存のコンピューター用のアプリケーションは量子コンピューターでは一切使えないため、すべてをイチから自分で作らなければならなかった。

金融計算のためのプログラムを組もうとしても、まず量子コンピューター用のプログラムを作るためのツールがない。量子コンピューター用のプログラミングをするためのツールを作るところから、研究が始まった。

現在ではAmazonやGoogleが量子コンピューターの利用サービスを提供しているが、当時は量子コンピューターの数が非常に少なく、そのようなサービスもなかった。「量子コンピューターの製作を行っているカナダのベンチャー企業を訪問して話を聞くなどしながら、開発を進めました」と湊は研究の黎明期を振り返る。

湊はそうやって量子コンピューター用のツールを作っていったが、ツールを作ってもその存在を知ってもらうことがなかなかできない。それが、異能vationプログラムへの応募につながる。

次回は、異能vationプログラム中の活動について話を聞く。

中編に続く

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