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失われた“声”を取り戻す「Syrinx」(中編)

竹内雅樹

竹内雅樹にとって、異能vationプログラムの支援は金銭的にも、あらたな挑戦としても、とても大きな価値があったという。プログラムはウェアラブル人工喉頭「Syrinx」の大きなブレイクスルーとなった。

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文:山本貴也

竹内雅樹は2020年度の異能vationプログラム「破壊的な挑戦部門」に選ばれ、ウェアラブル人工喉頭「Syrinx(サイリンクス)」の研究・開発を進めた。

(インタビューの前編はこちら

異能vationプログラムでは、最大300万円の資金の支援がある。そこで竹内が購入したのが、レーザー変位計だ。人工喉頭は、デバイスの中の振動子が振動し、その振動が喉に伝わることで声となる。精密な研究には、振動の正確な測定が必要だ。レーザーを当てて振動を計測するレーザー変位計は「全然手が届かない金額のものでしたが、異能vationプログラムのサポートで購入することができました。大変助かり、現在も使わせてもらっています」と竹内は言う。

専門的な計測機器は、基本的には高価だ。振動を測定するレーザー変位計は異能vationのサポートで導入できたとのこと。

また、プログラム中に行ったことで重要なのが、実際にSyrinxを使ってもらい、そのフィードバックをもらうことだった。病気で声を失った4人に渡して使ってもらったところ、「声がやはり機械的」「ブーッという振動音の音漏れが気になる」などの改善点とともに、「リハビリで声を出すことができて気分が明るくなった」といったポジティブなフィードバックがあり、開発の参考・励みになったという。

フィードバックの中には、小児慢性肺疾患で声を失った小学生の子どももいた。ウェブサイトを通じてSyrinxの存在を知ったその子どもの親から、「小学校の卒業式で返事をする際に使いたい」と連絡があった。快諾した竹内は、首に当たる部分の紐やバックルの素材、使い勝手をその子どもに合わせて工夫して提供。Syrinxは実際に卒業式で使われ、「とても喜んでもらって、今でも使ってくれています」と竹内は笑顔で話す。

「Syrinx」は、ハンズフリーで自然に使えることを目指している。

フィードバックにあった振動音の漏れに関しては、ゴムを周りに貼ったりゲルを間に挟むなどさまざまな方法を試したが、根本的な解決には至らなかった。また、振動子を喉に当てる位置について、筋硬度計を使って適切な位置の特徴、傾向を探ってみたが、法則性は見つからなかった。「振動音の漏れについても、振動子を当てる位置についても正解にはたどり着かなかったのですが、今のやり方ではできない、わからないということがわかっただけでも大きな収穫。異能vationプログラムで実施したさまざまなトライが、その後の開発につながっています」と竹内は言う。

次回は、異能vationプログラム以降の開発について話を聞く。

後編に続く


竹内雅樹プロフィール

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