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2020年度の異能Vationプログラム「破壊的な挑戦部門」に選ばれた、たいがー・りーの「声シャワー」は、シャワーヘッドに組み込まれたスピーカーから人間の声が流れ出し、シャワーを浴びるように声を浴びることができるという作品だ。声を聴くのではなく、浴びるという体験が、独特の感覚を生む。
たいがー・りーは2010年から発明家としての活動を開始したが、その原点にあったのは、“モテなかった”経験だったという。
「中学校、高校のときにずっとモテなくて、当時、僕は恋の妄想ばかりしていました。好きな人とこんなデートをしてみたいなと妄想したり、こんな話ししてみたいなと妄想したり、その妄想を形にして発表している感じです」と、たいがー・りーは言う。
そうしてできた作品のひとつが、「あの娘と同じ字が書けるひらがな練習帳」である。
字には、書く人の個性が表れる。好きな人が書く字には好きな人の個性が表れており、その字に愛着を感じることは珍しくないだろう。しかし、たいがー・りーはその先に行き、「好きな女子と同じ字が書けるようになりたい」と妄想を膨らませた。通常のひらがな練習帳と同じように、好きな人の筆跡によるひらがなの五十音が、薄く印刷してある。それをなぞって練習すれば、好きな人と同じ字が書けるようになるという作品だ。
たいがー・りーの妄想は、留まることを知らない。好きな人の文字だけではなく、好きな人の声もいいと思う。そして、声を聞くだけではなく、声を浴びてみたいと考える。浴びるといえば、何だろう。シャワーだ。だったら、シャワーヘッドにスピーカーを付けて、好きな人の声を浴びられるようにしよう……。
こうしてできたのが、「声シャワー」だった。シャワーヘッドから出る声は、実際にたいがー・りーが好意を寄せている女性の声を使用し、好きな人の声を浴びることができる作品となった。
「声を耳で聞くのではなく、肌が感じる。浴びてみたとき、これは今までに体験したことのない感覚だと思いました」とたいがー・りーは言う。
声シャワーが、恋の妄想から生まれた作品であることに間違いはない。しかし、たいがー・りーは声シャワーにさらなる可能性を感じていた。家族や友達の声を浴びるとどうなるのだろう、自分の声を浴びるとどうなるのだろう、犬や猫など動物の声を浴びるとどうなるのだろう?
声の可能性を追求したい、そしてその思いを多くの人に知ってもらいたい、そうしてたいがー・りーは、異能vationプログラムへの応募を決めた。
>次回は、異能vationプログラム中の活動について話を聞く。