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生まれる前に先天性心疾患を見つけ出す(前編)

2018年度・2021年度の2回にわたり、「破壊的な挑戦部門」に選ばれた福家信二は、一貫して「先天性心疾患(CHD)の出生前診断法の開発」に挑んだ。

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文:山本貴也

福家信二は2018年度、2021年度の2回にわたり、異能vationプログラムの「破壊的な挑戦部門」に選ばれた。取り組んだテーマはいずれも、「先天性心疾患(Congenital Heart Disease: CHD)の出生前診断法の開発」。赤ちゃんが生まれる前、胎児のときに先天性の心臓疾患を発見する方法の開発に挑んだ。

生まれたときにすでに心臓に異常を抱えている「先天性心奇形」は、新生児の100人に1人ほど存在する。そのうちの半分から3分の1ほどは重症の先天性心奇形で、内科的な治療が必要だ。重症の先天性心奇形は死亡に至ることも珍しくなく、沐浴時の事故を上回り、乳幼児の死亡原因のトップとなっている。

また、死亡には至らなくても、以後、心臓に障害を抱え続けことになるケースもある。

「確かに、疾患としては生まれてから見つかっても間に合うことが少なくありません。ただ、全体の中では稀なケースかもしれませんが、先天性心奇形が原因で亡くなる赤ちゃんは一定数います。ご両親にしてみればやはり『何でもっと早く見つからなかったのか』と思われますし、医者としてはこのような事態は避けたいものです」というのが産婦人科医としての福家の問題意識だった。

通常、産婦人科では超音波検査を行い、胎児の状態を観察している。しかし、先天性心奇形に関しては出生前の診断ができてない症例がほとんどで、「出生前診断率は2割から3割ほど」。疾患を見逃して生まれてきて、赤ちゃんの状態がおかしいと気づいてから専門医にかかるケースが多くなっている。

その主な原因は、超音波に関する知識と経験を産婦人科医が必ずしも持っていないことにある。産婦人科の専門医であり、かつ超音波の専門医でもある産婦人科医は非常に少ない。「高精度な超音波診断ができる人は、おそらく都道府県で1人、2人だと思います」と福家は言う。

高精度な出生前診断技術を普通の産婦人科医が利用できるようになれば、先天性心奇形を早期に発見でき、死亡したり、長く疾患を抱えたりすることになる赤ちゃんを減らすことができるのではないか──。こう考えた福家は、正常な心臓の3次元モデルを作ることで胎児の心臓疾患を発見する方法に取り組むことになった。

次回は、異能vationプログラムでの活動について話を聞く。

中編に続く

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