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人のように歩き、走ることができる二足歩行ロボットは、人類の夢のひとつだ。2021年度異能vationプログラム「破壊的な挑戦部門」に選ばれた前田 洋が取り組んだテーマは、「人間に近い歩行動作で生物感を出せるロボットの実現」。人間が歩くのと同じように歩行できるロボットの機構の追求である。
前田は二足歩行ロボットの研究・開発を始めて、すでに15年ほどになる。そもそものきっかけは、アニメ「機動戦士ガンダム」のプラモデルだった。
「ガンダムの100分の1スケールのプラモデルを手に入れまして。全高180mmくらいの小さなやつです。これを『アニメと同じように動かしたい』と思ったのが始まりです」と前田は研究のきっかけを振り返る。
1/100 ジムスパルタン(全高180mm,重量195g)の歩行動画。かなり古いものなので画質が悪いです。#ジムの日pic.twitter.com/J0kz0o0nBK
— 真広(まひろ) (@med_mahiro) April 6, 2018
前田は二足歩行ロボットの研究を進めていったが、一番の問題になったのが歩くときのバランスだった。人間は歩くときに全身を駆使し、非常に複雑な動きでバランスを取っている。
「人間の骨格構造で特に優れているのが、衝撃の緩和能力です。地面に脚を付けたとき、足の裏、足首、膝、腰などが複雑に連動して、衝撃を柔らかく吸収します。これをロボットで再現するのが非常に難しいんです」と前田は言う。
人間の歩行動作の再現は、二足歩行ロボットの開発の歴史の中で課題であり続けた。一世を風靡したホンダの二足歩行ロボット「アシモ」でも人間の歩行動作は完全には再現できず、重心を上下させず、できるだけ水平に保ちながら、膝を曲げたまま歩くような形になっている。
「ある意味、ものすごくロボットらしい動きなのですが、雪の日に転ばないよう、腰を落としながら慎重に歩いているみたいで、見た目にはあまり美しくありません。僕としてはやっぱり、アニメに出てくるロボットのように動かしたい。要は、見た目と運動性のギャップが大きいんですよね。見た目は格好いいロボットでも、いざ動き出すとぎこちない。きれいな女性型のロボットでも、歩き出したら腰を落としておじいさんのように歩いてしまう。それはなんとかしたいなという思いをずっと持っていました」──前田のこの思いが、異能vationプログラムでの開発につながる。
次回は、異能vationプログラム中の活動について話を聞く。
中編に続く