「超人化スーツ」挑む松本光広。前編・中編に続き、インタビューの最終回では、今後の方向性についてお届けする。
ひと通り動作するようになった超人化スーツだが、今後、松本はどのように発展させていくのだろうか。
「小型化、軽量化もそうですが、性能的に改良しなければいけないところがあります。今ベストには25個センサーが付いていますが、センサーの超音波は広がっていくので、少し遠い距離のモノを感じようとすると、横のセンサーの超音波と干渉してモノがなくても振動することがある。一種の誤作動ですね。
1m以内といった近くのモノを検知する設定にするとそういうことは起こらないのですが、近くまで来たときに震えても対応できなかったりするでしょうし、近ければ気配でわかるということもあるでしょう。5m、10mといった距離にあるモノを誤作動なく感じ取れるようにするため、センサーの最適な数と配置を考えていきたいと思っています」
動くことと、実用に耐えうるかはまったく別の問題と言うことだろう。
さて、超人化スーツはもちろんだが、松本は普段どのような研究を進めているのだろう。
「超人化スーツもそうですが、僕は人が使う道具を創造することに興味があります。たとえば、円を描くためのコンパス。あれ、使いこなしてきれいに円を描ける人って意外と少ないんです。その問題を解消するため、簡単、きれいに円が描ける新しいコンパスを開発しています。そのほかには、テープカッターも作っています。テープカッターからセロテープなどを引っ張ると、テープカッターごと動いてしまうことってないですか? そういうことが起こらない新しいタイプのテープカッターです」
超人化スーツは人間の感覚ではわからないものをわかるようにすることで危険を回避する、安全性を高める。コンパスとかテープカッターはなかなか使いこなせない点、使いづらい点を使いやすい仕組みにする。松本は、人が使う道具を研究することで利便性を高め、人と関わっていきたいと語る。
最後に、今後異能vationプログラムに挑戦しようと思っている人に向けたメッセージを聞いた。
「アイデアを実現していく段階で、ほかの人と一緒にやったりするのは全然問題ないと思うんです。たとえば、設計に長けた人と一緒に設計を進めるようなことはいいと思いますし、自分も一部、人に手伝ってもらったところがあります。
でも何か新しいモノを創造する、ゼロからモノを作り出すときには、個人の発想、個人の興味、個人の意志がスタートになると思うんです。最初から人が集まって何か生み出そうとすると平均化されてしまうというか、1人1人が面白いことを考えていても3人くらい集まると結局平均なものになってしまうということをすごく感じています。やっぱり個人の思いを実現したときに面白いものができるのではないでしょうか。
出発点は、個人。個人で秘めている発想があって、それに実現性があるのなら、ぜひ挑戦してみてください。きっと面白がって支援してもらえると思います」