小川晋平が「超聴診器」で見ている未来は明るい。
「超聴診器」は、心電と心音のデータをAIが解析することで、心臓の状態を診断する際に自動で迅速にアシストすることを目標に、研究開発を進めている。また、AIの結果を始めとする諸データを遠隔で送ることで、遠隔聴診を実現する。それにとどまらず、ほかの医療機関との協働で可能性は大きく広がる。
「超聴診器」は、医療業界で熱い注目を浴びている。現在、小川が代表を務めるAMI株式会社は15の医療機関と提携して研究を進めているが、ほかにも全国の医療機関から共同研究の話が持ち込まれている。
小川は当初、循環器以外の医師が心疾患を早期発見するために「超聴診器」が使われることを想定していた。しかし学会やシンポジウムで研究の話をすると、「心不全の定量化ができるならぜひ使いたい」と循環器の専門医からも熱い反応があった。在宅医療の医師も同様だ。
「自宅と医師を結ぶ遠隔医療もでそうですが、私達は『Doctor to Doctor (DtoD)』、医師と医師をつなぐ遠隔医療も重要だと考えています。ほかの病院と連携しながら、診断、治療につなげていくやり方です」と小川は言う。
そうすると可能性は大きく広がっていく。ほかの医療機関、ほかのメディカルデバイスと連携することで、遠隔でも対面での診療以上のことができるようになる可能性がある。遠隔医療、在宅医療のあり方が革新的に進化する。そのキラーデバイスのひとつに、「超聴診器」がある。
「超聴診器」は国の審査が進み、別の承認プロセスになるAI部分に先駆け、まずはハードの早期販売に向けて着実に進んでいる。ここまでたどり着くことができたのも、異能vationプログラムの後押しがあったからと小川は言う。
「私が異能に採択されたとき、『超聴診器』のプロトタイプがやっと完成しているくらいで、本当にまだ何できておらず、やりたいことが先行している状態でした。そういうまだ芽が出ていないような人を応援して、どんどん引き上げてくれるのが異能vationプログラムだと思っています。誰からも評価されていない人こそ、ぜひチャレンジしてみてください」
医療の世界に革新をもたらそうとしている小川からの、次の挑戦者へのメッセージだ。