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壮大なローテクノロジーで時を刻む「書き時計」

鈴木完吾

デジタル技術を用いず、カラクリというローテクノロジーで時刻を数字で描写する「書き時計」。その開発に取り組む鈴木完吾は、異能vationプログラムの支援によって、木製の巨大な書き時計からジュラルミン製の小型な書き時計へのステップアップを果たしたという。
取材・文:山本貴也

──応募のきっかけは?
 僕は大学でプロダクトデザインを専攻して、卒業制作で「書き時計」というものを作りました。これは歯車を組み合わせたカラクリによってアームが動き、1分ごとに時刻を書き換える仕組みになっています。この「書き時計」を小型化したものを作りたいと思ったのが、異能vationプログラムに応募した理由です。
 卒業制作の「書き時計」は木製ですが、小型化するにはより強度が高い素材を使う必要がありました。選んだのはジュラルミンです。木は電動糸ノコで加工していましたが、ジュラルミンを切り出すには工作機械が要りますし、材料費もかかります。その費用を支援していただいて、小型化に挑戦したかったんです。

──実際の制作はどのように進めたのでしょう。
 まずCADで設計します。しかし今回は木の「書き時計」を単純に縮小したのではないので、時間がかかりましたね。
 今回はひとつの動力から時計を動かす機構と字を書く機構、2つの方向に力を分岐させています。また時刻を書く動きは1分間に1回で止まりますが、時計の部分は動き続けなければなりません。ひとつの動力から力を2方向に分け、一方は1分間に1回で止まり、一方は動き続ける。ここをどうするかが難しかったです。
 最初の「書き時計」では400ほどだった部品の数も、今回は3200くらいまで膨れ上がりました。歯車だけでも30種類くらい。そのひとつひとつをデザインするため、時間がかかります。当初は2ヵ月くらいで設計を終える予定でしたが、結局3ヵ月ほどかかってしまいました。

──そのあと、実際の組み立てに入るわけですね。
 CADの指示通りに切削加工を行なうCNCフライスという機械を使って、ジュラルミンを削り出していきます。部品の数が多いため、それだけでも結構大変です。
 また、部品の数が多すぎてCAD上で動かそうとするとPCが固まってしまうんです。そのため、設計段階では静止画面を見ながら「こう動くだろう」という推測の下、作業を進めています。その通りに動くかどうかチェックしながら、部品を組み立てました。
 3200の部品を動作確認しながら組み上げていって、完成するまで5ヵ月ほど。ただ、プログラムの1年という期間では調整不足のところが残ってしまいました。

書き時計

デジタル処理を用いず、カラクリ機構で制御されたペンが時刻を筆記する「書き時計」。3200のパーツのうち、既製品が1500、CNCフライスで切り出したオリジナルパーツが1700。切り出し後の微調整も重要になってくる。

──どのようなところが足りなかったのでしょう?
「書き時計」は磁石が付いたアームが1分ごとに動いて磁気ボードに時刻を書く仕組みになっているのですが、時刻を書き始めるとすぐ動きが止まってしまう問題が起きました。部品の表面にちょっとしたザラつきがあると、そこで力の損失が起こります。また、組み立ての精度が少しでも低いとそこでも力の損失が発生します。部品が大量にあるため、そうした誤差の積み重ねが最終的な動作に影響したのではないかと考えています。
 ただ設計・組み立てはひと通り完了。時刻を筆記する動作、時刻の循環的な切り替えなどの機構を確立することができました。これは達成できた成果だと思っています。

──鈴木さんにとって異能vationプログラムとは?
 このプログラムにはとても感謝しています。別に最新のテクノロジーを追いかけている必要はありません。カラクリを使った「書き時計」もローテクノロジーの塊ですが、こうしたものでも尖ったアイデアだったら採択される可能性があります。何より、アイデア重視で達成することが条件ではないので、高い目標に挑めます。過去の実績は重視されませんし、機械系とか工業系の人でなくても大丈夫。自分が面白いと思っているアイデア、変だけど実現してみたいアイデアがあったらぜひ挑戦してみてほしいと思います。

Kango SUZUKI


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