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歯や骨をiPS細胞によって復活させる再生医療(後編)

江草 宏

iPS細胞の腫瘍化を回避した骨再生治療へ挑戦している江草 宏(2019年度「破壊的な挑戦部門」)が重要視しているのは、多様性を持ってやりたいことを続けることだという。
文:山本貴也

異能vationプログラムでiPS細胞による骨再生医療の研究を行った江草 宏は、プログラム以降、実用化に向けた取り組みを行っている。現在進めているのが、プルーフ・オブ・コンセプト(概念実証)だ。

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「実用化の前段階として、コンセプトを実証して安全性と効果を確かめる必要があります。そこで動物を使わせてもらい、動物の骨がないところに我々が作ったものを入れてみて、本当に骨が再生できることを実証しています。また、効果が高いといっても、コストが高いと実際に使ってもらえません。コストを下げるための新しい技術も開発しています」と江草は言う。

iPS Cell

iPS細胞凍結乾燥骨は、従来の人工骨よりも優れた骨再生効果を誇る

ただ、医療分野のものだけに実用化までには時間がかかる。「サイエンスのフィールドではイノベーションがあったら一気に研究・開発が早まることがあります。そこに期待する部分もありますし、自分自身でそうしたイノベーションを起こしたい気持ちも絶えずありますが、そうしたものがなければ徐々に進めていって10年後くらいに実用化できれば」というのが江草の見立てだ。

江草は自身の研究を、チームで進めている。そこで重視しているのが、異質な人材をチームに入れることだ。「研究に関わらずどんな仕事でも一緒だと思いますが、クリエイティブな発想が持てる場をどう作るかが大切。そこで私は、自分にとって異質だと思う人にチームに入ってもらうようにしています」と江草は言う。

「新しいものを何か生み出すときには、一つの目ではなく、いくつかの目、しかも全然違った目が入ることで進め方や展開の仕方が大きく変わってくることがあります。ときにはリスクの高い仮説が出て、チャレンジして失敗することもありますが、そのチームの状態が本当に良ければ、その失敗は楽しい失敗になります。みんなが同じ見方になっていると間違った方向にみんなで突っ込んでいってしまうこともありますが、違った目があると止めてくれますし、そういう意味でも異質の人の存在は重要です」

最後に、江草はこんなメッセージを残してくれた。

「まだ私も決して成功しているわけではないので大きなことは言えませんが、ただ、やりたいと思ってやっていることは続くので、やりたい気持ちを大事にするのはいいんじゃないかと思います。生活しているとやり続けることに対していろいろなハードルが出てくると思いますが、あまり気にせず、楽しいと思うんだったらやり続ける。天才と馬鹿は紙一重と言いますが、やり続けることによって天才になることもあるような気がします」

江草もこれまで、やりたい気持ちで研究を進めてきた。そしてiPS細胞による骨再生医療が実用化するまで、その気持ちで走り続けることだろう。

江草宏

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