花園園恵は2020年度の異能vationプログラム「破壊的な挑戦部門」で「ソーラー花電 ヒカルカ」の開発を進めたが、手掛けているプロダクトはそれだけではない。柔らかな発想で多様なものを作り出している。
建築士の友人とのデザインユニット「11土design」の作品も、ユニークなものばかりだ。ユニットの名前は「土」という漢字を2つに分けると「十」と「一」になるところから来ており、地域の資源を活かしてものをつくることをコンセプトとしている。岡山産の帆布を生地とした地下足袋、九州産の竹を使ったものさし、合板などの建築資材を使用したバッグなど、建築的な発想を活かしたものづくりも行っている。
もともと花園には「11土design」を結成する前から地域共生やワークショップを強く意識した作品があり、たとえばびわ湖のシジミ貝殻やヨシなどを資材として活かし、ウェブサイトで募集した一般参加者と作った建築「フライング・キャタピラ」はその最たる例だろう。「11土design」結成への流れは、至極自然なものだった。
また現在、服を「人を包む最小空間」と捉え、服のブランド「T-PEACE」も立ち上げている。そしてその服を作っていたある日、突然「ヒカルカ」と繋がり、今後の展開として生地にシート状のソーラーパネルを付け、外を歩いていると蓄電して夜になると光る服も作ってみたくなったという。「ソーラーパネルがいまよりも薄くなり、素材に貼り付けられるようになるという前提ですが、光って自分が花になれるような服を考えています」と花園はプランを語る。
さまざまなものづくりを手掛ける花園。その原点にあるのは「手を動かす」ことだ。
「手を動かすと作れるんですよね。頭で考えていても絶対できないと思います。建築も現場で作り上げるのが好きで、一応図面は書きますが、現場を一般開放して参加者を募り、一緒に手を動かしながら作るということをずっとやってきました。作れないと思っていたものでも、手を動かすと作れる。それが素敵なところです」と花園はいう。
最後に、異能vationプログラムへの応募を考えている人へのメッセージとして花園はこんな言葉を残してくれた。
「いいアイデアを持っている方はたくさんいると思います。でも、すごくいいアイデアでも頭の中にあるだけではもったいない。頭の中にあるのなら、出した方がいいと思います。異能vationプログラムは、そのためのすごくいいチャンス。本当にやりたいと思っていることを実現しようと思うなら、頭の中に置いておくのではなく、まず応募してみてはいかがでしょう」
まず、アイデアを外に出してみる。これまでさまざまなプロダクトを形にしてきた花園からの、ものづくりの第一歩を踏み出すアドバイスだ。