2019年度異能vationプログラムの「破壊的な挑戦部門」に選ばれた石井洋介の「うんコレ」は、自分のうんこの状態を報告(カンベン)しながらゲームを進めることで大腸がんの早期発見を目指す美少女スマホゲームだ。このうんコレを、石井はオープンイノベーションの形で開発した。
(インタビューの前編はこちら)
「ゲームの開発は、エンジニア、ストーリーを考える人、キャラクターデザイナー、背景を描く人、ユーザーインタフェースのデザイナー、音楽を作る作曲家など、さまざまな人が関わって行います。5年ほど前にうんコレを作り始めたときは、設定とかも自分で考えて全部僕がやるみたいな感じだったのですが、やはりプロの人に参加してもらったほうがいいものができると思いました」と石井はその理由を語る。
石井はプロトタイプを作ると、ゲームショウなどに出展。開発に加わってくれる専門家を募った。すると、石井のコンセプトに興味を持った人が「私声優やってるんですけど」などと声をあげた。ゲームショウに出展するたびに足りない分野の専門家を募集し、やがてうんコレの開発チームができていった。
石井も含めて、開発の参加者はすべてボランティア。平日は自分の仕事をこなし、週末に集まってうんコレの開発を進めた。そして、基本的な機能を搭載した初期型のアルファ版が完成する。そんな折、知り合いが異能vationプログラムへの応募を勧めてくれたという。「異能のことは以前から知っていて意外と合っているような気がしていた」という石井は、勧めに従って応募し、2019年度の「破壊的な挑戦部門」に選ばれた。
異能vationプログラムの期間中に進めたのは、より完成度を高めたベータ版の開発だった。開発チームに参加していたのはすべてiPhoneユーザーで、アルファ版はiPhoneでしかテストしていなかった。そこで、タブレットも含めてiPhone以外のいろいろなタイプのデバイスに対応できるよう、開発を進めた。また健康に関する個人情報を扱うため、セキュリティーも完全なものにしなければならない。
並行してそのほかの部分もバージョンアップを行い、充実したベータ版が完成した。
オープンイノベーションのチームによるうんコレの開発を、石井は次のように振り返る。
「僕はうんこのゲームを作るというアイデアはあったんですが、美少女に変身するというのは想像もしませんでした。腸内細菌のキャラクターを作るというのも、クリエイターと話さないとできなかったことです。当初自分が想定していた以上のゲームになりました。自分だけでやっていたら、医療医療したつまらないゲームになっていたと思いますし、逆にクリエイターの人だけでもこのゲームはできなかったでしょう。一緒にやることで、それぞれでやっていてはできないことができた。これがイノベーションだと思います」
次回は、異能vationプログラム以降の展開について話を聞く。
後編に続く