前田 洋は、異能vationプログラムで人間のようにスムースに歩くことができる二足歩行ロボットの機構に挑んだ。そして、プログラム後に取り組んでいるのが、機構の小型化だ。
「まだ構想設計の段階ですが、実現すると外観的にもガンダムやボトムズみたいなアニメのロボットに近いものができるようになります。小さいお子さんが見たとき、アニメと同じような動きをしているので思わずガン見してもらえるような、そんな感じにしたいと思っています」と前田は目を輝かせる。
前田の二足歩行ロボットの開発は、アニメのロボットのような動きを実際のロボットができるようにとの思いが最初にあった。しかし開発を続ける中で、別の目標も視野に入るようになった。義足への貢献である。
5年ほど前、前田は義足を履く機会があった。そのときに感じたのは、強烈な違和感だった。「今はもう少し進歩していると思いますが、僕が履いた義足は衝撃の緩和能力がないに等しい感じでした。義足を地面につけると、衝撃が膝に直撃するんです。歩きづらいですし、階段なんかは怖くて近づけませんでした」と前田は回想する。
話を聞くと、リハビリは厳しく、義足つけている人は膝が痛くて仕方がないという人が多いという。そこで考えついたのが、異能vationプログラムで開発に取り組んだ、骨盤の運動を拡張する機構だった。
「骨盤の運動を広げるようにすればきれいに歩けるようになるという発想は、そのときの経験から来たんです。義足をつけてのリハビリは大変で、かなりの訓練が必要で、痛みもあると聞いています。人間が義足に合わせて訓練するのではなく、履いた義足が人間に合わしてくれる。痛みもなく、特別な訓練をしなくても歩ける。そこまで進化させたいと思っています」というのが前田の夢だ。
前田が二足歩行ロボットの開発を始めてから15年。開発を続けるにあたって大切なことを聞くと、「健康」という答えが返ってきた。
「自分のアイデアを実現するためにがんばっている人って、ひたすら我が道を行くタイプが多いと思うんですよ。がむしゃらになってしまって、ともすると自分の健康状態に目が向かなくなってしまいます。開発には時間がかかりますが、健康じゃないと開発は進められません。健康に留意してがんばってほしいと思います」
人間のようにスムースに歩ける二足歩行ロボットの実現へ、そして痛みなくすぐに歩ける義足への実現へ、前田は健康な体とともに歩み続ける。