2021年度異能vationプログラム「破壊的な挑戦部門」に選ばれたBBコリーが手掛けたのは、「人の目を離さない表示デバイス」の開発だ。表示方式はデジタル的だが、機構はアナログ。本来かけ離れたものであるデジタルとアナログが融合した、不思議な魅力のあるデバイスだ。
BBコリーはもともとモノ作りが好きで、高専時代にはロボットコンテストに挑戦していた。社会人になってからも、仕事のかたわらでモノ作りを継続。「本物そっくりの紙製ミキサー車」や「実際の音のなる手のひらサイズ電子ドラム」など100を超える作品をSNSで発表し、反響を得ていた。
そうした中で生まれたのが、「溶ける時計」というアイデアだった。「デジタルの時計って、見たときに面白くないなと思っていまして……。からくりみたいなアナログな方法でデジタルな表現ができたら面白いんじゃないかと思いました」とBBコリーは発想の原点を振り返る。
デジタル時計の数字は、縦4つ、横3つの7つのセグメント(棒)で表示されるようになっている。「0」なら、縦4つ、横2の6つのセグメントで「0」になる。「1」は、縦2つのセグメントだ。BBコリーは、透明の丸い板に縦と横のセグメントを描き、モーターで回転させることを思いついた。この板を重ね合わせれば、0から9までの数字を表示することができる。横に2つ並べると「12」「36」というように2桁の数字になり、時間や分を表せる。
セグメントで数字を表示するという点ではデジタルだが、透明の板を回転させるという点はアナログ。時計なのに、見ていると時間を忘れて見入ってしまうため、名づけて「時間が溶ける時計」だ。
Twitterでこの作品を発表すると、BBコリーの思惑通り「見てるだけで時間がなくなっちゃいました」といった反応や「どうやって動いているかわからない」といった驚きの声が上がり、テレビのニュース番組からも取材を受けるほどの反響があった。
「おそらくそうした報道を見たのだと思いますが、異能vationプログラムに推薦してくれた人がいて、ある日突然、採択されたという連絡が来たんです。自分としてはそれなりの反響もあったので一区切りつけたつもりだったのですが、せっかく機会をいただいたので、できなかったところを詰めていくことにしました」と、BBコリーはプログラムでの開発に入った。
次回は、異能vationプログラム中の活動について話を聞く。
中編に続く