2020年度の異能vationプログラム「破壊的な挑戦部門」に選出された花園園恵は、「ソーラー花電 ヒカルカ」の実現へと歩みを始めた。
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それまでも、「ソーラープランツ」で植物型の太陽光発電システムを作ってはいた。しかし、今度は屋外ではなく室内に設置するものだ。また、花を咲かせるところも「ソーラープランツ」とは大きく異なっていた。「ただ発電して光るだけでなく、夜になって部屋の電気を消したらセンサーが反応して花が咲く、そこまでやりたいと思っていました」と花園は振り返る。
アルミで花びらを作ると、めしべの部分に設置したLEDの光を反射して美しい。しかし、花びらを自然な形で咲かせるのが難しい。最初は紐を茎に通し、紐で引っ張って咲かせることを考えた。ただ、そうすると突然パッと花びらが開いてしまう。自然に、ゆっくりと花が咲くようにしたい──。
そこでヒントになったのは、中学生の長男の助言だったという。長男は小学生のときからロボットを作っており、ロボット全国大会で何度も受賞経験を持つ「ロボット作りのベテラン」だった。
「結局、花を咲かせようとするとロボットの技術が必要になります。それまでも人型のロボット、動物型のロボットはありましたが、私が作りたいのは植物型のロボットだということがわかりました」と花園はいう。
たどり着いたのは、傘をさすような機構だった。紐ではなくチューブを茎に通し、チューブを押し上げたり引いたりする。そうすると、花びらはゆっくり開いたり閉じたりするようになった。
異能vationプログラムの1年で、「ヒカルカ」の試作品は完成した。日中にソーラーパネルの葉が蓄電し、夜になると紫色の花を咲かせる。まさに「ソーラー花電」だ。しかし、花園のイメージはさらに膨らんでいる。
たとえば、天気によって咲き方が変わる仕組み。晴れの日なら夜に全開になるが、曇りの日は五分咲き、七分咲き。雨の日は少ししか咲かない。その日の天候に応じて花の咲き加減が変わる。また、いま花の色は紫一色だが、夏は涼しいブルー、冬はオレンジなど、季節に応じて色を変えるアイデアもある。
「あとは、水やりをする感覚で光を出すシャワーを使って光をあげると、曇りや雨の日でも充電量を上げられ、夜に全開で咲かすことができるというのも面白いですね。逆に、光をやりすぎたら咲かない。そのように、『ヒカルカ』とのコミュニケーションを楽しめるところまで持っていければと思っています」と花園はいう。