2019年度異能vationプログラムが終わったあとも、生駒は「点検出AIシステム」に関わり続けている。検出した点が小さく見えづらかったところを、ハッキリした点として見えるように改良するなど、バージョンアップを図っている。
現在の生駒の課題は、システムの存在を知ってもらうことだ。「点検出AIシステム」は特定の点を即座に検出するというユニークな機能を持っているが、知ってもらわないことには使ってもらえない。そこで、現在力を入れているのが、クラウドシステム化だ。「点検出AIシステム」をウェブアプリケーションとしてクラウド上に乗せ、研究者などが自由に使えるようにする。画像をアップロードしたら認識結果が出て、点の位置座標をAIが教えてくれるというシステムだ。
「2022年の春くらいまでの実現を目指しています。研究者の方が実験データを入れて、研究のスピードアップをする。これが想定しているスタンダードな使い方です。結局、私の『点検出AIシステム』はさまざまな研究の起点になればと思っているんです。私自身がさまざまな専門的な研究をできるわけではないので、いろんな分野の研究者の方に使っていただいて、それぞれの研究の進展やスピードアップに貢献できれば」と生駒は言う。
※取材後、「点検出AIシステム」のウェブアプリケーションが公開されました。撮影した星空などの写真を入力してお試しできます。
https://webapp.tilfproject.com/
生駒の「点検出AIシステム」は、2014年度の異能vationプログラムに応募した「天体写真のAI」が元になっている。そこから、足掛け6年かけて開発を進めたことになる。その間のモチベーションは、どのように保っていたのだろうか。
「アイデアを思いついてから研究を完成させるまでには、長い時間がかかります。その間、成果がゼロだとモチベーションが尽きてしまうと思うんです。ですから私は最終目標に到達する前にプロトタイプをいくつも作り、その都度成果を確かめるようにしています。成果を見てモチベーションを保ちつつ、改良や目標修正などを行って研究を前に進めていきます」と自分の方法論を解説する。
そして2回目の挑戦で異能vationプログラムに採択された生駒は、挑戦を考えている人にこんな言葉を残してくれた。
「異能vationへの応募を考えている人は、何かの研究機関に属しているのではなく、個人の方が多いと思います。私もそうだったのですが、そういう方は面白いアイデアを持っていても研究したり発表したりする機会がなかなかないのではないでしょうか。異能vationは、そうした機会が得られる貴重なプログラムです。ぜひ、挑戦を楽しんでください」
研究を続けるにも、挑戦するにも、楽しむこと。これが、目標に向かって歩み続ける生駒からのメッセージだ。